「食物繊維って何?」愛犬の腸とお便りを支える大切な成分~前編~

更新日:9月5日
前回は、愛犬の「お便り(便)」について、
「何回したか」だけではなく、便の状態や、その子のいつもとの違いを見ることが大切
というお話をしました。
では、そんな便の「量」や「硬さ」「出しやすさ」には、何が関係しているのでしょうか?
そのひとつが、毎日の食事に含まれている「食物繊維」です。
「食物繊維=便秘に良いもの」
「野菜を食べれば腸に良い」
そんなイメージを持っている方も多いかもしれません。
でも実は、食物繊維にはさまざまな種類があり、便だけでなく、腸内細菌や腸の環境にも関わっています。
今回は、そんな食物繊維の基本から見ていきましょう。
1.そもそも「食物繊維」って何?
食物繊維は、栄養学的には炭水化物の一部に分類されますが、糖質とは異なり、小腸で消化・吸収されにくい成分です。
犬や猫自身の消化酵素では分解されにくいため、そのまま大腸まで届くものもあります。
でも、
「消化できない=必要のないもの」ではありません。
大腸まで届いた食物繊維の一部は、腸内細菌によって利用されます。
また、便のかさや水分、腸の動きなどにも関わっています。
つまり食物繊維は、
「便として出ていくだけのもの」ではなく、腸の中でさまざまな役割を持っている成分
なのです。
2.食物繊維には「水溶性」と「不溶性」がある
食物繊維は、その性質のひとつとして、
水溶性食物繊維
不溶性食物繊維
に分けられます。
水溶性食物繊維
水に溶けたり、水分を抱え込んだりする性質を持つ食物繊維です。
種類によっては腸内細菌によって発酵されやすく、腸内細菌が利用することで、腸内環境にも関わります。
代表的なものには、ペクチンや一部のオリゴ糖などがあります。
不溶性食物繊維
水に溶けにくく、便のかさを増やすなど、排便に関わる働きを持っています。
野菜や穀類などにも含まれています。
ただし、
「水溶性=良い」
「不溶性=便秘に良い」
というように、単純に分けられるわけではありません。
食物繊維は、種類によって発酵されやすさ、水分の保持、便への影響などが異なります。
だからこそ、「食物繊維を摂ればいい」ではなく、どんな食物繊維を、どのくらい摂るのかが大切なのです。
3.食物繊維は「腸内細菌のごはん」にもなる
ここで、食物繊維と腸内環境の関係を見てみましょう。
一部の食物繊維は、小腸で消化されずに大腸まで届きます。
そこで待っているのが、腸内細菌です。
腸内細菌は、食物繊維の一部を利用して発酵を行います。
その過程で作られる代表的なものが、
「短鎖脂肪酸」
です。
短鎖脂肪酸には、
酢酸
プロピオン酸
酪酸
などがあります。
これらは腸内の環境や腸の細胞の働きなどに関わっています。
特に大腸の細胞は、腸内細菌が作る短鎖脂肪酸をエネルギー源として利用することがあります。
つまり、
食物繊維
↓
腸内細菌が利用
↓
短鎖脂肪酸などが作られる
↓
腸内環境に影響する
というつながりがあるのです。
4.「食物繊維=便を増やす」だけじゃない
ここまで聞くと、食物繊維のイメージが少し変わってきませんか?
食物繊維は、
① 便のかさや水分に関わる
だけではなく、
② 腸の動きや排便に関わる
さらに、
③ 腸内細菌に利用され、腸内環境にも関わる
という、さまざまな側面を持っています。
だからこそ、食物繊維を考えるときは、
「便秘だから食物繊維!」
と単純に考えるのではなく、
「その子の腸では、どんな働きをしているのかな?」
という視点を持つことが大切です。
5.「野菜を食べれば腸にいい」は本当?
食物繊維を摂る方法として、野菜を思い浮かべる方も多いと思います。
野菜には食物繊維だけでなく、水分やビタミン、ミネラルなども含まれています。
ただし、
野菜=腸活
と考えて、たくさん追加すればいいわけではありません。
食物繊維は種類や量によって働きが異なり、多すぎると便の量が増えたり、食事全体の消化率に影響したりすることがあります。
また、野菜を追加しすぎることで、主食から摂るべき栄養素とのバランスが崩れる可能性もあります。
大切なのは、
「何を足すか」よりも、「なぜ足すのか」
を考えること。
6.実は「多ければ多いほど良い」わけではない
「腸に良いなら、食物繊維はたくさん摂った方がいい?」
と思うかもしれません。
でも、答えはNOです。
食物繊維は、量が多すぎると食事全体の消化率に影響したり、便の量が増えすぎたり、種類によってはガスなどにつながったりすることがあります。
そのため、
「食物繊維をたくさん摂る」ことが目的ではありません。
大切なのは、
その子にとって適切な種類・量・バランス
です。
そして、その答えを考えるときに役立つのが、前回の「お便り」です。
7.「お便り」は食物繊維の答え合わせになる
例えば、食事を変えたり、野菜をトッピングしたあとに、
「便の回数が増えた」
「便の量が増えた」
「少し柔らかくなった」
という変化があったとします。
そんなときは、
「食物繊維の量や種類が変わっていないかな?」
と考えてみることができます。
もちろん、便の変化は食物繊維だけで起こるわけではありません。
食事量、水分、脂質、タンパク質、生活環境、ストレス、体調など、さまざまな要因が関係します。
だからこそ、
食事を変えたら、便を見る。
便が変わったら、
「何が変わったのか?」
を振り返る。
この繰り返しが、その子に合った食事を考えるヒントになります。
まとめ|食物繊維は「便」と「腸」をつなぐ存在
食物繊維は、単に便の量を増やすためのものではありません。
便のかさや水分、排便に関わるだけでなく、一部は腸内細菌によって利用され、短鎖脂肪酸などを生み出すことで腸内環境にも関わっています。
そして、食物繊維にはさまざまな種類があり、働き方もそれぞれ違います。
だから、
「食物繊維は多ければいい」
「野菜をたくさん食べれば腸にいい」
ではありません。
大切なのは、
「どんな食物繊維を、どのくらい摂っているのか」
そして、
「その結果、お便りはどう変わったのか」
を見ることです。
次回は、もっと具体的に。
「じゃあ、実際にどう取り入れたらいいの?」
という疑問に答えていきます。
便秘気味のとき、軟便のとき、野菜をトッピングするときなど、「お便り」から考える食物繊維の選び方・与え方についてお話しします。
※食物繊維の必要量や種類は、年齢、食事内容、体質、疾患などによって異なります。


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